音楽と著作権の夜 ── NexTone Award 2026、六本木で10年目の授賞式

好きな曲が世に広まるとき、その裏側では必ず「管理する側」の仕事が動いている。作った人間に対価が届く仕組みがなければ、音楽で生きていける人間はいない。NexTone Awardは、その見えない仕事に年に一度だけ光が当たる夜だ。

NexToneとは何か

株式会社NexToneは、音楽著作権の管理とデジタルコンテンツの流通を手がける企業だ。アーティストや音楽出版社が制作した楽曲の著作権を預かり、楽曲が使用されるたびに発生する使用料を適切に分配する、いわば音楽産業の「裏方の裏方」にあたる存在である。

ストリーミングサービスやYouTube、ニコニコ動画など、音楽が消費されるあらゆる場面にNexToneの仕事は関わっている。

そのNexToneが2017年に創設したのが「NexTone Award」だ。

自社が管理する楽曲の中から、著作権使用料の分配額が特に高かった作品と、年間を通じて大きな話題を生み出したアーティストやプロジェクトを表彰する。選出の基準は「世の中でどれだけ多く聴かれ、愛され、利用されたか」というデータそのもの。

有識者による審査ではなく、リスナーの日々の行動の積み重ねが賞を決める、という構造が面白い。2024年度からはイベント形式の授賞式として開催されるようになり、今回の「NexTone Award 2026」は創設から10年目となる記念の回だ。


10周年の夜、六本木へ

会場は六本木のEX THEATER ROPPONGI。通常の授賞式に加え、10周年を記念して過去受賞アーティストによるスペシャルライブも行われる構成となっていた。MCは3年連続となる藤井隆と上田まりえ。

鉢嶺もその場にいた。音楽業界に深く関わっているわけではないが、こういった場に足を運ぶのは、業界の外から見ることで見えるものがあるからだ。

授賞式でUUUMの社長、梅景 匡之氏が受賞していた。鉢嶺が経営するバー「BeeBee」にお客様として来てくれたことのある人物だ。音楽著作権管理の授賞式で、自分の店のお客様と再会する。業界の外にいるようで、気づけばどこかで繋がっている。銀座で働いていた頃からずっと、そういうことが起きてきた。


受賞作品 ── 2025年、最も聴かれた音楽を作った人たち

各賞の受賞作品は当日発表という形式で、会場でその瞬間を迎えた。NexTone Awardが表彰するのはアーティストではなく著作者、つまり楽曲を生み出した作詞家・作曲家だ。どれだけ曲が広まったかという事実が、そのままクリエイターへの勲章になる。

Gold Medalは、こっちのけんと と GRPが作った『はいよろこんで』が受賞した。

こっちのけんとは菅田将暉の弟としても知られるマルチクリエイターで、自身のうつ病の経験をもとに楽曲を書き続けてきた。理不尽なことも無意識に飲み込んでしまう人たちへ寄り添うという切実な内容を、ダンサブルで明るい曲調に落とし込んだ。TikTokで爆発的に広まり、YouTubeのMVは1億回再生を突破。2024年を代表する楽曲となり、今回は昨年のYouTube賞に続いて最高賞を受賞した。1年越しで頂点に立った形だ。

Silver Medalは早川博隆と渡邉俊彦が手がけた『かわいいだけじゃだめですか?』アーティストはCUTIE STREETだ。

デビュー1か月後にリリースされたこの曲がTikTokで爆発的に拡散し、総再生回数63億回を突破。短所も長所も「かわいさ」として肯定する歌詞がZ世代に刺さり、わずか1年ほどで表彰台に届いた。楽曲を書いた早川博隆はレコーディングに立ち会い、「こちらのイメージをすぐ歌声として出せるボーカルの表現力の高さがすごい」とメンバーへの評価を語っている。書いた人間と歌った人間が互いに引き出し合った結果の受賞だ。

Bronze MedalはAKASAKIが自ら作詞・作曲した『Bunny Girl』。動画プラットフォームを起点にじわじわと聴かれ続けてきたセルフプロデュースの楽曲だ。

特別賞はカラフルピーチ、国際賞は作曲家Snail's Houseの『hot milk』が受賞した。Snail's Houseは電子音楽シーンで世界的に評価されている日本人クリエイターで、自身の楽曲が海外で広く利用されていることへの評価が受賞につながった。YouTube賞は柊マグネタイトが作詞・編曲した『テトリス』。ニコニコ動画発の楽曲文化が今もYouTubeで多くの再生を稼いでいることを証明する受賞だ。

そして10周年を記念して新設された10周年特別賞には、MONGOL800の上江洌清作が作詞し、MONGOL800が作曲した『小さな恋のうた』が選ばれた。

過去10年間で最も著作権使用料分配額が多かった楽曲として選出されたこの曲は、2001年のリリースにもかかわらず今なおカラオケで歌われ、結婚式で流され、学校の卒業式で演奏され続けている。「時代を越えて聴かれ続ける」という事実を10年分のデータが証明した格好だ。この日スペシャルライブにも出演していたMONGOL800が、自身の楽曲でこの賞を受け取るという巡り合わせが、会場に静かな感慨をもたらしていた。ニコニコ創作文化功績賞はGigaが受賞。ニコニコ動画上での二次創作文化を長年にわたって支えてきたクリエイターへの10年分の敬意といえる賞だ。

スペシャルライブ ── THE YELLOW MONKEYとMONGOL800

授賞式と連動して行われたスペシャルライブの出演は、THE YELLOW MONKEYとMONGOL800という2組だった。

THE YELLOW MONKEYは1989年から活動を開始し、グラムロックをルーツに持つ独自のスタイルで90年代の日本の音楽シーンを牽引したバンドだ。2004年に解散したのち2016年に再集結。2024年には東京ドーム公演を成功させ、10枚目のアルバム『Sparkle X』を引っ提げた全39公演のツアーを完走した。

MONGOL800は沖縄出身の3ピースバンドで、2001年にリリースした2ndアルバム「MESSAGE」がインディーズ史上初のオリコン1位を獲得した。平和を願うメッセージと自然体の言葉が世代を超えた支持を集め続け、2023年には結成25周年を迎えた。10周年特別賞を受賞した『小さな恋のうた』を、この日この場で演奏したということに、音楽の持つ長い射程を感じた。


受賞と演奏が交差する夜

授賞式とライブが同じ空間で交互に展開する構成は、「音楽産業の裏側」と「音楽そのもの」を同時に見せるという意味で、よくできていた。賞を受けた楽曲がどこかで流れ、それを作った人間への敬意が会場に漂う。数字の裏側にある人間の仕事に光を当てる、というNexToneの意図が、10年目にして形として完成してきたような夜だった。


著作権という仕組みがあって、音楽が守られ、アーティストに対価が届く。その構造を10年かけて「授賞式」という形で可視化してきたイベントが、六本木の夜に静かな熱を持っていた。音楽が好きな人間には関係ない話に見えて、実は最も直接的に関係している話だ。好きな曲がこれからも鳴り続けるために、こういう夜が必要だと思った。