銀座アーカイブ ― 都市に刻まれた建物たち#2_銀座の戦前建築遺産 ― 第1菅原ビル

東京・銀座は高級ブランドや最新ビルが並ぶ街として知られますが、その片隅には昭和初期の歴史を今に伝える希少な建築物がひっそりと現役で使われています。その代表例が「第1菅原ビル」。1934年に建てられ、約90年以上にわたり機能し続けるこのビルは、戦前建築としての価値・レトロな設備・モダニズム建築としての魅力を併せ持つ文化遺産です。本稿では建物の概要から細部に至るまで、建築史・構造・設備・周辺文脈を交えて詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 銀座に現存する戦前建築「第1菅原ビル」の歴史と背景
  • モダニズム建築の特徴を持つ外観デザインの見どころ
  • 現役稼働する手動開閉式エレベーターの仕組みと魅力
  • 建物内部に残る昭和初期の意匠と構造美
  • 銀座の都市変遷と戦前建築が残る価値の重要性


誕生と概要:銀座に残る戦前建築の代表格

銀座七丁目のランドマークとして

第1菅原ビルは、東京都中央区銀座七丁目のすずらん通りと花椿通りの交差点角に位置する歴史的建築物です。1934年(昭和9年)に竣工し、鉄筋コンクリート造・地上5階建て(塔屋付)の構造を持ちます。設計は建築材料学の研究者でもあった吉田享二、施工は戸田組によるもので、昭和初期のモダニズム建築の特徴を備えています。

基本スペック(一覧)

項目 内容
建築名 第1菅原ビル
所在地 東京都中央区銀座7丁目すずらん通り・花椿通り角
竣工年 1934年(昭和9年)
構造 鉄筋コンクリート造
階数 地上5階 + 塔屋
設計者 吉田享二
施工 戸田組
現況 現役オフィス / テナント(1〜3階に飲食店など)
特徴 手動開閉式エレベーター、縦長窓・丸窓

建築デザインと外観の特徴

昭和初期モダニズムの表情

第1菅原ビルの外観は、茶褐色のタイル張りで統一され、直線的な縦長窓と丸窓がリズミカルに配置されています。この組み合わせは、当時のモダニズム建築の影響が見られる特徴であり、機能性とデザイン性が両立した造形です。階段室の縦長窓や丸窓は竣工当時のまま残され、当時の素材感と光の取り入れ方を現在に伝えています。GINZA OFFICIAL

タイル外装と保全

外壁は長年の経年劣化を受けながらも保存が継続され、近年外壁タイルには補強として金網が取り付けられていますが、周囲の景観を損なわない工夫がされています。


手動開閉式エレベーター ― 昭和を運ぶ動く文化遺産

現役稼働するレトロな設備

このビル最大の特徴として挙げられるのが、竣工当初から現役で稼働する「手動開閉式エレベーター」です。扉は自動開閉しません。乗降時は外側の扉 → 内側の蛇腹式扉を手動で開閉する必要があります。

なぜ残ったのか

現代のエレベーター規格に合わないシャフト幅の制約から、扉とかごは当時のものを保ちながら、制御システムや安全装置などは現代式に更新されています。これにより安全性を維持しつつレトロな雰囲気を残しています。

利用時の特性

  • 扉をしっかり閉めないと、他の階から呼び出しても動かない仕組み。

  • 階数表示は針式インジケーターで、機械的な動きと視覚表現が特徴的。


内部空間のディテールと遺構

窓・階段の造形美

階段室にある丸窓と縦長窓は、竣工当時のガラスや窓枠がそのまま使われている可能性が高く、光と影のコントラストが美しい空間をつくっています。これは戦前建築ならではの特徴で、修繕を重ねながらも原設計の意図を尊重しています。

レトロと現代の共存

エレベーター操作盤は現代仕様に更新されていますが、窓まわりや入口床などの意匠は歴史的な要素が多く残存しています。文化財としての価値以上に、実際に機能し、日々の営みの中で息づいている建築遺産です。


テナントと現在の使われ方

商業・オフィスの現役利用

1階には「椿屋珈琲店」、2階・3階にも飲食店舗やオフィス機能が入居し、戦前建築が現代の都市生活に溶け込む姿を見せています。一般公開されていない部分も多いですが、建物を囲む通りから外観を楽しむことができます。


銀座の都市文脈と歴史的価値

戦前建築としての希少性

銀座は再開発の進む都市ですが、戦前に建てられた建築物は数が限られています。その中で第1菅原ビルは約90年にわたり外観・構造が保全されている稀有な存在であり、都市史・建築史の観点からも高い価値を持っています。

銀座地区の変遷

銀座は、江戸時代の銀貨鋳造所に由来するエリアとして発展し、明治・大正・昭和と再開発を繰り返しながら東京屈指の商業地へと成長しました。現在も多くのブランドビルや商業施設が並ぶ中、このような歴史的建物が現役で佇む街並みが、銀座の魅力の一部となっています。


第1菅原ビルをデータで理解する

銀座の建物年代別分布(概算)

年代 建築物の特徴 現存割合(推定)
明治期(〜1912) 欧風建築の初期 1〜2%
大正期(1912〜1926) モダン建築の萌芽 5〜8%
昭和初期(1926〜1945) モダニズム・RC造増加 8〜12%
戦後(1945〜1990) 高度成長期建築多数 50〜60%
近年(1990〜2025) 商業ビル・超高層 30〜40%

※建築年データは地域建築台帳等を基に作成した概算です(参考値)。戦前建築の現存割合はごく限られています。


まとめ:銀座が誇る「生きた建築遺産」

第1菅原ビルは、単なる古い建物ではなく、戦前から令和までの都市変遷を体現する「生きた建築遺産」です。手動式のエレベーターや設計意図の痕跡が残る窓・階段室など、多くのディテールが歴史的景観として価値を持っています。銀座という最先端都市の一角で、過去と現在が交錯する空間体験を提供する建物として、これからも注目され続けることでしょう。

記事監修者

CEO鉢嶺祐矢

銀座のナイトワーク業界で一線を画す存在として知られる株式会社ZENNO GROUPの代表取締役。銀座の高級クラブで14年間にわたり黒服として活躍し、その経験をもとに業界向けのさまざまなサービスを提供。非効率な業務体系を改善するため、株式会社ZENNO GROUPを創業し、業界の発展に貢献している。

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