関係者席から見た「LAST CALL COLLECTION」── キャバ嬢オーディションが、アリーナを埋めた日

夜の世界で生きる女性たちが、7,000人を収容するアリーナのステージに立つ。少し前なら、想像もできなかった光景だ。キャバクラという仕事が、いつの間にか表舞台のエンターテインメントになっていた。その変化の只中にあるイベントを、鉢嶺は関係者席から眺めていた。

LAST CALL COLLECTION ── 累計再生数10億回、キャバ嬢オーディション番組の集大成

「LAST CALL」は、カリスマホストとして知られるROLANDと実業家の溝口勇児が代表・MCを務めるYouTube番組で、国内初のスターキャバ嬢オーディション番組として知られる。関連動画の累計再生数は10億回を突破し、女性を中心に大きな支持を集めてきた。

応募者である「シンデレラ」が試練に挑み、合格者には美容クリニックから最大1,000万円分の整形費用が付与されるという、刺激的かつ現代的な企画が話題を呼んできた。

そんな番組から派生した初の大型リアルイベントが「LAST CALL COLLECTION 2026」だ。2026年6月28日、東京・お台場のTOYOTA ARENA TOKYOにて開催。7,000人規模を動員する大舞台として企画された。

鉢嶺は関係者の伝手を頼り、関係者チケットを入手して入場した。夜の世界に長く身を置く人間として、このイベントは無視できないものだった。

TOYOTA ARENA TOKYO ── 新時代の舞台

会場となったTOYOTA ARENA TOKYOは、昨年秋に開業したばかりの大規模アリーナだ。最大7,000人を収容するこの空間に、全国から人気キャバ嬢やトップインフルエンサーが集結した。開場14時、開演15時、終演は20時30分予定という、丸一日がかりの大型イベントだ。

これまで夜の世界のスターたちが、こうした正規のアリーナで主役として立つ機会はほとんどなかった。会場の規模そのものが、このコンテンツの勢いを物語っていた。

コンテンツの数々 ── 撮影会、公開収録、物販

イベントの目玉のひとつが、出演キャストとのツーショット撮影会だ。全席種に撮影券が配布され、上位席にはチェキ撮影特典まで付く。番組でおなじみのMCやレジェンドクイーンと直接写真が撮れるとあって、ファンの熱量は相当なものだった。会場内には複数のフォトブースが設けられ、来場者が思い思いに撮影を楽しんでいた。

番組の公開収録も行われた。普段は画面越しに見ているキャストたちが、目の前でカメラを回されながらやり取りを繰り広げる。テレビ収録とは違う、YouTube発のイベントらしいラフな空気感がそこにはあった。

物販コーナーでは、イベントオリジナルのTシャツ・タオル・ラバーバンドが数量限定で販売され、来場者全員に限定トレカ・ステッカー・オリジナルチョコなどが配布された。

スポンサーブースも充実しており、プラチナスポンサーの買取専門店による出張買取企画や、メインスポンサーの美容クリニックによる無料カウンセリングブース、番組人気企画「神ドクタータイム」の解説コーナーなども展開されていた。

さらに、水商売界の大手であるエースグループ、チックグループ、リオグループ、カイザーグループといった名だたるグループがスポンサーに名を連ねており、業界を挙げてこのイベントを後押ししている構図が見て取れた。夜の世界の総力戦、と言ってもいい布陣だ。

これらのスポンサーグループは、後述するクイーンたちのランウェイとは別枠で自身のランウェイを開催し、各グループの所属キャスト達が特別なドレスに身を包んだ姿を披露した。このイベントは単なるトークイベントではなく、エンタメ・美容・物販を一体にした「体験型」の構成になっているのが特徴的だった。

会場の熱気

来場者投稿では8割以上の席が埋まっていたとされ、場内は確かに熱を帯びていた。ファンはそれぞれに「推し」のキャストを持っており、目当ての人物が登場するたびに歓声が上がる。キャバ嬢という職業が、ここでは紛れもなく「スター」として扱われていた。

鉢嶺はその光景を、関係者席から眺めていた。夜の世界の人間が、これだけの規模で表舞台に立ち、ファンから声援を浴びる時代が来たのかと、素直に感心する部分があった。

直前に起きていたこと、そして「中止」されたはずのランウェイ

もっとも、このイベントは穏やかなだけの一日ではなかった。前夜から当日にかけて、番組の中心的なクイーン4名が相次いで出演を辞退するという事態が起き、SNS上では憶測が広がった。さらに、サプライズゲストとして登場予定だった明日花キララも、当日に出演をキャンセル。運営対応への不満をSNSで表明し、自身の出演予定だった出番前に会場を後にしたことを明かしている。

背景には複数の騒動が重なっていたとされるが、当事者間でも主張が対立しており、真相は現時点で断定できない。主催の溝口勇児氏は当日、暴露系アカウントから脅迫を受けたとして、目玉企画であるクイーンのランウェイを中止すると発表。原則払い戻し不可にもかかわらず、来場者全員へのチケット全額返金という異例の措置をとった。

ところが、話はそれで終わらなかった。レジェンドクイーンとして知られる伝説のキャバ嬢・エンリケが、シャンパン片手に堂々とランウェイを歩く様子を自身のSNSで公開。「ランウェイが無くて寂しくて急遽1人ランウェイ」と綴り、自身の判断で“強行突破”でランウェイを歩き、他のキャバ嬢もそれに続いたことを報告した。公式には中止されたはずの花道を、出演者自らの意思で成立させてしまったのだ。

鉢嶺はこの一連を、複雑な思いで見ていた。混乱は確かにあった。だが同時に、与えられた舞台が消えても自分の足で歩いてみせる人間がいる、という光景でもあった。

まとめ

問題の多いイベントだったのは事実だ。直前の辞退も返金騒動も、擁護できるものではない。だが、夜のビジネスの業界にとって、キャバクラという仕事が一つのエンターテインメントとして、7,000人規模のアリーナを埋めるコンテンツになったという事実は、決して小さくない。

かつて夜の世界は、表に出ることを良しとされない領域だった。それが今や、YouTubeで10億回再生され、リアルイベントが大型アリーナで開かれるまでになっている。中止されたランウェイを自ら歩いたキャバ嬢がいたように、この業界には舞台が荒れても前に出る強さがある。

今回の混乱は、その急成長に運営体制が追いついていなかった歪みの表れなのかもしれない。業界に長くいる人間として、この光景をただ批判するのではなく、夜の世界が新しい時代へ踏み出そうとしている過渡期の一場面として記録しておきたいと思った。次があるなら、今度はもっと良い形で見たい。